【独評】というコーナーをつくってみた。映画、本、舞台、コンサートなど、例によって独断と偏見で煮るなり焼くなりしてみたい。
で、まず「ユナイテッド93」。あの「9・11」から5年。遺族の了解を得て、製作された。
あのときイスラム原理主義テロ組織にハイジャックされた4機のうち、2機は世界貿易センタービルの2つのタワーに突っ込み、1機は国防総省(ペンタゴン)に墜落した。のこる1機はターゲットであるホワイトハウスに達する前にペンシルバニア州シャンクスヴィルに墜落、乗員乗客全員が死んだ。
そのターゲットに到達できなかった「ユナイテッド93」の機内では何があったのか、乗客と地上との電話交信などをもとに徹底調査して、まさにドキュメントタッチで製作された。
有名な俳優は出ていない。管制官などは実際の担当者が出演した。エンディングで出てくるキャストの中に名前があってそのわきに「AS HIMSELF」となっている人が何人もいた。これが実在人物の出演者である。
ラストの悲劇はすでにだれもが知っている。ではあっても、最後まで興奮を禁じえなかった。これほど緊張して画面にのめりこむ映画を観たのはひさしぶりのような気がする。
六本木のしゃれた映画館は若いカップルが多かったが、墜落を暗示させるラストの暗転場面での静寂。映画館とはこんなにも重い沈黙が支配することがあるのか、と改めて驚いた。
手持ちカメラを多用した画像はいやがうえにも緊張感を高める。航空機内はすべて手持ちカメラ、管制室など地上の場面もそうだったのではないか。
テロリストがハイジャックに使った武器はナイフとニセの爆弾だった。女性客室乗務員を羽交い絞めにして機長室へ侵入した。機長が銃を所持していたら、なんなく射殺できたはずだ。そうすれば、乗客に多少の犠牲が出ようとも、操縦室を奪われて墜落するという最悪のシナリオは避けられたのではなかったか。
乗り合わせた乗客たちが徐々に団結していってテロリストたちに襲い掛かる。すでに貿易センタービルのニュースなどは電話で知らされている。自分たちもどこかへ突っ込まれるのであれば、できるかぎりのことをしようじゃないか。熱湯、フォーク、消火器など武器になりそうなものを探して、機をうかがいテロリストたちに飛びかかる。
ラストは操縦かんに乗客の手が届き、それでも上昇できない、というところで終わっている。ターゲットであるホワイトハウスのかなり前方に墜落した。
人間が極限状況に置かれたとき、何ができるか、勇気とは何か。重いテーマをぶつけられ、しばらく口がきけなかった。
実際には、この航空機は空軍戦闘機が撃墜したのではないかという説もある。管制室と軍とのやり取りはなにやらえらくもたついているように見えた。それも作戦のうちで、実はまったく別のところで撃墜の決断が下されたのではなかったか。
そういいった詮索はしばらく置こう。映画の出来そのものからすれば、超一級品である。これがフィクションならば、ヒーローが出てきて全員が助かるのだが、現実はそうではなかった。
改めて「9・11」を考える好機としたい。「国際テロ撲滅」に立ち上がったアメリカの方針に異議を唱える向きもやたらと多い。日本はブッシュ政権の対応をいち早く支持してきた。
こうなると、テロリストの側につくのか、その反対か、いずれかしかない。日本はアメリカ支援のためにイラクに自衛隊を派遣した。国際社会によるテロ包囲網形成の一助である。
民主党、社民党、共産党はこれに反対した。社民党と共産党は政治的にはほとんど力はないから、何を言おうと大勢に影響がない。
問題は民主党だ。イラクへの自衛隊派遣反対にはそれなりの理屈があることはわかるが、せんじ詰めれば、テロリスト擁護の側に立っているのである。日米同盟基軸を口では言いながら、この態度はなにか。
民主党はイラクへの自衛隊派遣反対を打ち出した時点で、政権から大きく遠のいた。その反省はまったく出ていない。社民党と同じようなことを言っていて政権が取れるはずがない。
ついでにいえば、社民党は「非武装中立」に戻ってしまったようだから、これは完全な「戦争誘発勢力」「好戦主義政党」と断じて構わない。いま、東アジアの一角で、日本が非武装政策を取ったら、軍事バランスは一挙に崩れ、そらおそろしい軍事緊張の局面を迎える。
それにしても、国家リーダーの決断は国の行方を決める。いままさに、これと同じことがおきて、乗っ取られた航空機が皇居に突っ込もうとしているとき、海上にいる間に撃墜命令を出せるかどうか。そこが国家リーダーの究極の決断である。これができないというのであれば、総裁選からどうぞお引取り願いたい。


by mogu2mole
「あたご」判決で考える