3年前に房総半島沖で発生した自衛隊イージス艦「あたご」と漁船の衝突事件で、横浜地裁は「あたご」の当直責任者であった3等海佐2人に無罪(求刑禁固2年)を言い渡した。
裁判の結果だから厳粛に受け止めたいが、あの当時、以下のようなコラム記事を産経新聞に書いていたのを思い出した。
こういう事件が起きると、自衛隊へのすさまじいばかりのバッシングとなる。自衛隊「悪玉」論が席巻するのだ。
そういう社会状況にひとこと、ものを言いたかった。改めて再掲したい。
<<「なだしお」「雫石」の再現を憂える>>
【産経新聞連載コラム「政論探求」2008年2月27日付・再掲】
海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故をめぐり、野党は石破茂防衛相の辞任を要求している。漁船の父子2人がいまだ行方不明という痛ましい事故だ。むろん、第3管区海上保安本部には徹底捜査を望みたい。
前防衛事務次官の「ゴルフ接待汚職」といい、相次ぐ機密漏洩といい、防衛省・自衛隊には「タガの緩み」を払拭して本来の国防任務をまっとうできるよう、大改革・大刷新を求めなくてはなるまい。
そうしたことを前提として、あえて言及しなくてはならないのは、今回の事故の受け止め方が、「なだしお」「雫石」を連想させることだ。
昭和63年7月、海自潜水艦「なだしお」と遊漁船「第一富士丸」が横須賀沖で衝突、「第一富士丸」が沈没し、30人が犠牲となった。これより先、昭和46年7月には、岩手県雫石町上空で全日空の旅客機と訓練中の航空自衛隊戦闘機が衝突、双方とも墜落して全日空機の162人全員が死亡した。戦闘機の訓練生はパラシュートで脱出、生還した。
いずれも悲惨な事件であったが、共通しているのは、自衛隊側を非難する報道ラッシュと当時の防衛庁長官が辞任したことだ。これにより、自衛隊側が100%悪いというイメージが定着した。
だが、「なだしお」の場合、海難審判では双方に過失があったとされ、刑事事件としても「なだしお」艦長と「第一富士丸」船長に執行猶予付きの禁固判決が出ている。
「雫石」の場合、訓練生とこれを指導していた別の戦闘機の教官が業務上過失致死、航空法違反で逮捕、起訴されたが、訓練生は無罪、教官は執行猶予付きの禁固刑となった。刑事裁判では全日空機側の衝突回避対応の遅れも認定され、民事裁判では過失割合が「国2、全日空1」とされた。
つまり、いずれも発生直後の「自衛隊全面悪玉」報道と最終的に明らかにされた構図とは、相当の食い違いがあったのだ。
海上衝突予防法では、ほぼ真向かいですれ違う場合(「行き会い船」という)は右側通行を義務付け、一方で、互いに進路を横切る場合(「横切り船」)は、相手を右側に見る側は相手の進路を横切ってはいけない、などと定めている。
「清徳丸」の僚船は1隻が右左に蛇行し、他の1隻は「あたご」の直前を横切っている。「あたご」が漁船群の中を自動操舵で進行しようとしていたのも不可解には違いないが、見張り隊員が「相手がよけてくれると思った」と証言しているという報道もある。
事故原因は現段階では断片的に伝えられていることばかりなのだ。ここは政治の舞台でも冷静さがほしい。「なだしお」のケースでは、国際社会では「軍艦」の通航が最大限に優先されるのが常識、という指摘があったことも想起しておきたい。











by mogu2mole
「あたご」判決で考える